個人サイト(創作サイト・同人サイト)という言葉を目にした・耳にしたことはあるでしょうか。また、言葉を知っている方はどのようなイメージを持たれるでしょうか。
- 昔流行ったものというイメージがある
- SNSで話題になっているのを見かけたことがある
- キリ番踏み逃げ禁止、ダミーエンター、相互リンク募集……
- 作品発表の場として今の時代にはそぐわないと思う
- 見たことがない、よく分からない
同人や創作界隈など一部では、上のようなイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかし個人サイトは、その作り方も楽しみ方も時代に沿って進化しています。作品の投稿や閲覧、交流にSNSしか利用していない方は知らないだけで、実は令和の時代にも個人サイトはひそかな盛り上がりを見せているのです。
この記事では、今の時代の個人サイト事情についてお話していきます。
個人サイト=個人が趣味の目的で運営しているサイト
まず個人サイトとは、文字通り個人が趣味の目的で運営しているサイトのことです。
個人サイトに明確な定義はありませんが、おおむね以下のような条件を満たしているものが個人サイトと言えるでしょう。
- 運営者が企業・組織ではなく個人
- 非営利目的(同人誌・同人グッズなどの頒布を行っていたり、FANBOXへのリンクなどが設置されている場合はあります)
- 自分の作ったイラストや漫画、小説などのコンテンツを訪問者に楽しんでもらう、あるいは自分で楽しむ目的で運営している
個人サイトは、ユーザー登録すれば完了のSNSとは異なり、自分でレンタルサーバー会社と契約を結んでサーバーを借りたり、自分でHTMLコードを書いたりしてサイト全体を構築する必要があります。その手順をある程度省略することのできる制作手段もありますが、通常は開設するためにはかなりの手間と時間がかかります。
個人サイトを開設するために必要な具体的な日数は、サイトの規模や作り方にもよりますが、不慣れな場合だと着手から数週間~数カ月かかる場合もあります。
では、どうしてそのような手間をかけてまで個人サイトを開設する人がいるのでしょうか? また、個人サイトが昔のものだと言われているのはなぜでしょうか。順を追って解説していきます。
2000年代ごろ、個人サイトは「必要なもの」だった
2000年代ごろ、絵を描いたり小説を書いたりする人の多くが、インターネット上で作品を発表するために個人サイトを持っていました。
今はTwitterやPixivといった会員登録制のSNSが当たり前のように存在していますが、この時代にはそういったSNSは未発達でした。便利な今の時代とは違いすぎて想像するのが難しいかもしれませんが、こういった背景から、インターネット上で作品を発表するためには自分でサーバーを用意してサイトを作る必要があった、という事情があります。
当然、素人が自分でサイトを作るのは大変な作業です。しかし、インターネットを使えば、使わない場合よりもはるかに多くの人とつながり、はるかに多くの人に自分の創作物を見てもらうことができるのです。創作者たちは時間を割いてHTMLを勉強し、試行錯誤しながらサイトを自作し、そこに自慢の作品を掲載した、というわけです。
インターネット普及率が増加し、インターネットを利用する創作者や、創作物を見るのが好きな閲覧者が増えると、個人サイト人気に火がつきます。
HTMLテンプレート(これを使うとサイト制作の手間が大幅にカットできます)配布サイトや、個人サイト向けのフリー素材サイト、はたまた個人サイト向けのサーチサイト(自分好みの個人サイトを探せる登録型サーチエンジン)など、個人サイト運営者を応援するメディアもどんどん増えていきました。
SNSの流行により、個人サイトブームは終わりを告げた
しかし時が流れ2010年代ごろになると、Twitter、PixivなどのSNSが流行しはじめます。
このようなSNSは、メールアドレスさえあればカンタンに登録できて、気軽に作品を投稿できる便利なツールとして、創作者たちにも大変な人気を博しました。
また閲覧者からも、SNSのオープンさや交流の手軽さ、わざわざ自分で個人サイトを探しに行かなくても自分好みの作品を大量に見つけられることが、何かと忙しい現代人の好みにはまったのでしょう、大いに喜ばれました。
こういったSNSのオープンさにひかれた人たちは、更新が面倒で閉じられた場所である個人サイトから徐々にSNSへと活動軸を移行します。SNS人気が大きくなるとともに、個人サイトや、個人サイト制作支援サイトは次第に更新されなくなり、やがて姿を消していきました。
同時期にスマホのような小型の端末が普及し、Webサイトにはパソコンから見てもスマホから見ても快適に閲覧できるデザイン(レスポンシブ対応)が求められるようになりましたが、個人が趣味で運営しているサイトでは自力で対応するのが難しかったことも、個人サイトブームが終わる原因のひとつだったと思われます。
では、個人サイトはもはや時代遅れになったのでしょうか? それは違います。そもそもSNSでの作品発表や交流が肌に合わない人は、SNSが人気になっても個人サイトでの作品発表を細々と続けていました。「SNSが流行している」「個人サイトのブームは去った」という事実があるだけで、流行のSNSが肌に合わない人たちは、自分に合ったスタイルで活動し続けていたのです。
2020年代から再び個人サイトが再注目されています
しかしながら令和の今、にわかに個人サイト人気にまた火が付き始めているのをご存じでしょうか。
- 利用しているSNSのUIや仕様の変更に疲れてしまった
- 利用しているSNSの運営が不祥事を起こしたなど、不信感がある
- SNS疲れを感じている、SNSから距離を置きたくなった
- 作品を発表する際に、いいねなどの数字を気にしすぎてしまうのが嫌だ
- プラットフォームに依存しない作品発表の場が欲しい
- レスポンシブデザインや今の流行などに対応したHTMLテンプレート、個人サイト制作・運営支援メディアが増えつつある
こういった事情があり、個人サイト運営が再注目されているのです。
- 個人サイトは、UIも仕様も自分で好きに制御できる
- 個人サイトは、プラットフォームやその運営に依存しない
- 個人サイトは、他人の存在やいいねの数が気にならない
かつて個人サイトを作ったことのある人が中心となり、「個人サイトに回帰しよう」という流れが、少しずつ起きているのですね。
今の個人サイトの特徴は?
個人サイトは、個人が趣味の目的で運営しているサイトという点では昔も今も変わりませんが、その実態や存在意義には、昔と今とでは大きく異なる部分があります。
今っぽくオシャレなサイトが増えている
今の個人サイトは、今らしいオシャレなデザインのものがとても多いです。というのも、レスポンシブ対応、かつ令和らしいオシャレなテンプレートを配布するサイトさんが、実は増えているのです。
こちらの記事にテンプレートサイトさんをまとめています。眺めているだけでもワクワクするような素敵なデザインのテンプレートがたくさん用意されているのが分かりますよ。
テンプレートを使えば、自分でいちからHTMLを書かなくても、自分好みのサイトが作れます。これからサイトを作る人にとって、強力な味方となる存在です。
HTML手打ちの他に、さまざまなサイト制作手段の選択肢がある
HTMLテンプレートを利用して個人サイトを作る場合、多少はHTMLの知識をつけて、ある程度HTMLを編集できるようになる必要があります。なんだか難しそうだし、できる自信がない……という方もいるでしょう。
そんな方に朗報です。実はHTMLの勉強をしなくてもサイトを作れる方法もあるのです。具体的には、
- ホームページ作成サービスを利用する(一番カンタンだけど、自由度は低め)
- WordPressを利用する(導入は少し大変だけど、自由度と利便性はバツグン)
これらの方法ではHTMLやCSSを書かなくても自分でサイトを立ち上げることができるのです。詳しくは、以下の記事をご参照ください。
いいねボタンやマンガビューワなど、今らしいプログラムが利用できる
テンプレートと同じように、個人サイト向けフリー配布プログラムも今らしい進化を遂げています。例えば、当サイトではPHPの利用できるサーバーであればカンタンに設置できるいいねボタンを配布しています。
その他にも、企業の運営するマンガサイトのようなきれいなマンガビューワや、ミニブログとしても運用できる多機能なひとこと掲示板など、有志の方々がさまざまな無料プログラムを開発・配布しています。
これらのプログラムを利用すれば、自分のサイトをより今らしく機能的、かつ好みのものに仕上げることができるのです。
「個人サイト運営」がひとつのジャンルとなりつつある
令和の個人サイトはなんといっても、「個人サイト運営」そのものがひとつのジャンルのようになっていることが特徴です。
かつて個人サイトがブームだったころは、個人サイト運営者同士の交流も、同じジャンルで活動している人との交流がメインでした。個人サイトを訪問する人の主な目的が、「自分の好きな作品を探しに・見に行くこと」にあったからです。
しかし個人サイトを運営する人が激減した今は、「個人サイトを運営している」という一点が創作者の大きな共通点となるようです。取り扱いジャンルが全く違うサイト同士でも訪問しあったり、リンクを繋ぎあったり、メッセージを送りあったりして交流している場面をよく見かけます。
文章にすると不思議ですが、個人サイトを訪問する人の主な目的が「個人サイトを訪問すること」になった、と考えられるかもしれませんね。
作品を発表するために個人サイトを持つ必要があった昔と比べて、今の個人サイトは創作者にとって「なくてもいいもの」です。だからこそ、個人サイトを持っている創作者同士では、活動ジャンルが違っても親近感や興味が湧くということなのでしょう。このような昔とはまた違う空気感も、令和の個人サイトの特徴です。
個人サイトを見てみたい!どうやって探せばいい?
ここまで読んで、個人サイトとはどういうものなのか、実際に見てみたいとワクワクしている方も多いかもしれません。個人サイトを探すにはどうすればよいでしょうか。
個人サイトを探してみたいなら、登録型サーチサイトを利用するのが一番よいでしょう。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
サーチサイトご利用の際には、各サイト利用上の注意事項をご確認の上、運営者さまや登録サイトさまの迷惑にならないようにしましょう。
個人サイトは、Googleなどの大手検索エンジンやSNSで検索してもあまり出てきません。その理由は以下の通りです。
- あまり人目に触れずに活動したいという意図から、サイトに検索避けを施したり、SNSからサイトへのリンクを貼らなかったりして、サイトへのアクセス流入を抑えている場合が多い(特に二次創作を取り扱っているサイトはこの傾向が強いです)
- SNSにサイトを掲載すると、拡散されて意図しない層にアクセスされる危険があるので、SNSへのURL掲載を禁じている個人サイトも少なくない
訪問の際には、以上のことに気を付けて、サイトごとに記載されている注意事項などを確認し、サイト運営者さまなどに迷惑がかからないように楽しみましょう。
個人サイトをつくる方法は?
個人サイトを作る方法はさまざまです。先ほどもこの記事で挙げましたが、詳細はこちらのページで紹介しています。
HTMLテンプレートとサーバーを用意して作成する場合の手順は、以下の記事が詳しいです。
多少お金を出してもいいから、知識がなくてもWEB拍手やメールフォームなどの便利な機能をカンタンに使いたい……!という方には、個人サイト向けのホームページスペースを利用するのがオススメ。
さらに、WordPressで個人サイトを作るためのノウハウは、この記事を書いたガタガタが運営している「ACT」というサイトで詳しく発信しています。
その他にも、Googleなどの検索エンジンで検索してみれば、個人サイトを作るためのさまざまなノウハウを手に入れることができます。
個人サイトを立ち上げるのは、なかなか大変です。一筋縄では思うようにいかないかもしれませんが、それでも無事に公開できたときの喜びはひとしおです。
当サイトでは個人サイトの立ち上げから運営まで、さまざまな視点からサポートする記事を公開しています。また、個人サイト運営をもっと楽しく、もっと便利にするためのフリー配布プログラムも用意しています。
個人サイト運営はとても楽しいですよ。トライアンドエラーで、ぜひ挑戦してみてほしいです!
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